恋も試合も全力で!【番外編】


「この辺にしといてやるよ」


そう言って、俺は自分の座っていた場所に戻ろうとした。

が、何かに阻止されて、動くことができない。


俺は視線を下に向けた。

綾子の手が、俺の服の裾を掴んでいた。


「綾子?」


下を向く綾子。

その顔は、赤く染まっていた。


「綾子、俺動けないんだけど」


そう言っても、綾子は手を離さない。

それどころか、更に力が入る。


「綾子ー?」


顔を覗き込もうとすると、思い切り手で押さえつけられた。


「ふがっ!」

「み、見ないで!!///」


赤い顔を見られたくないのか、俺の顔をズンズンと押し返す。


「あ、あやこ…く、ぐるじい…」

「うわっ、ごめっ…」


急いで顔をあげて、手を退ける綾子。

ハッとなってまた下を向いたけれど、俺は見逃さなかった。




< 79 / 162 >

この作品をシェア

pagetop