恋も試合も全力で!【番外編】
あたしは自分のいた場所に戻ると、教科書類をカバンに詰めた。
「綾子?」
そんなあたしを見た槇は、不思議そうに声をかける。
「帰る」
「えっ、なんで?」
泣きそうなあたしは、
涙が溢れないように、唇を噛み締めた。
「ちょっ、綾子!」
ドアの前で、あたしの左腕を掴む槇。
「いきなりどうしたんだよ? 帰るとか訳分かんねぇ」
焦りだす槇。
あたしは槇の方を振り向けなかった。
「…槇が、かまってくれないんだもん」
「え…?」
小さな震えた声で、あたしは呟いた。
「かまってくれないって…え?」
呆れたような槇の声。
そんな槇に、あたしは堪えていた涙が一筋流れ落ちた。