ヒロインになれない!
「……ずるい。」
ゆっくりと唇が離された後、ついそう言ってしまった。
「どうして?」
恭兄さまの瞳が情欲に揺れていることに気づいたけれど、私は目をそらす。
「ずるいもん。こんな風にされたら、舞い上がって、他の事なんかどうでもよくなるに決まってるやんか。」
恭兄さまは私の顔を捕まえたまま、ふっと笑った。
「まったく、あなたは、僕の理性を簡単に吹き飛ばしてしまうんだから。……受験が終わるまで我慢するつもりなのに、参るよ。」
……会話が微妙に噛み合ってない。
お互いに、相手を求めていることは間違いないのに。
駆け引きしてるわけでもなく、単にそれぞれが自分の理性を守るために相手に責任転嫁している。
「恭兄さま。本音トークしていいんやんなあ?」
私はそう前置きしてから、思い切って言った。
「私、恭兄さまのものになりたい。」
恭兄さまが、私の両頬から手を離した。
その両の手首をガシッと掴んで、私はもう一度訴えた。
「恭兄さまの腕の中で、毎晩眠りたいねん。あかん?」
恭兄さまは、頬を赤らめて、首を横に振りながら聞かれた。
「……それが、一番言いたかったこと、なの?」
私も恥ずかしかったけど、しっかりと頷いてから、聞いた。
「はしたない?」
恭兄さまの目に妖しく強い光が灯った。
「ああ。そんなこと絶対言っちゃいけないよ。僕以外、禁止。」
僕以外、ね。
ふわりと、恭兄さまの腕に包まれた。
「……うれしいよ。」
耳元でそう囁かれて、私もうれしくなる。
うれしいけど……
「あの、恭兄さま?ここ、学校のそばなんで、場所、移しません?」
同じ制服の子達がいっぱい通るのが気になってしょうがないので、私はそうお願いした。
恭兄さまは私を手放すと、咳払いしてから車を発進させた。
耳まで赤くなってる恭兄さまの横顔が、愛しくてしょうがない。
私は、いつまでも見とれていた。
「さて。行き先はどこがいい?」
しばらくして恭兄さまが私にそう尋ねた。
「夜景の綺麗な高層ホテル?箱根の温泉旅館?軽井沢もいいかもね。」
へ?
何で?
……わざわざそんな遠く行かんでも……
私は苦笑した。
恭兄さま、ロマンティストやとは思ってたけど、そんなにステレオタイプやったとは。
「スノッブですね。私、家がいい。囲炉裏に炭を熾して、炉辺でゆっくりお話したい。」
「……わかった。じゃ、炭と食料を買い足して、帰ろうか。我が家へ。」
「はい。」
私は、恭兄さまの肩にもたれ、心地よさに目を閉じた。
ゆっくりと唇が離された後、ついそう言ってしまった。
「どうして?」
恭兄さまの瞳が情欲に揺れていることに気づいたけれど、私は目をそらす。
「ずるいもん。こんな風にされたら、舞い上がって、他の事なんかどうでもよくなるに決まってるやんか。」
恭兄さまは私の顔を捕まえたまま、ふっと笑った。
「まったく、あなたは、僕の理性を簡単に吹き飛ばしてしまうんだから。……受験が終わるまで我慢するつもりなのに、参るよ。」
……会話が微妙に噛み合ってない。
お互いに、相手を求めていることは間違いないのに。
駆け引きしてるわけでもなく、単にそれぞれが自分の理性を守るために相手に責任転嫁している。
「恭兄さま。本音トークしていいんやんなあ?」
私はそう前置きしてから、思い切って言った。
「私、恭兄さまのものになりたい。」
恭兄さまが、私の両頬から手を離した。
その両の手首をガシッと掴んで、私はもう一度訴えた。
「恭兄さまの腕の中で、毎晩眠りたいねん。あかん?」
恭兄さまは、頬を赤らめて、首を横に振りながら聞かれた。
「……それが、一番言いたかったこと、なの?」
私も恥ずかしかったけど、しっかりと頷いてから、聞いた。
「はしたない?」
恭兄さまの目に妖しく強い光が灯った。
「ああ。そんなこと絶対言っちゃいけないよ。僕以外、禁止。」
僕以外、ね。
ふわりと、恭兄さまの腕に包まれた。
「……うれしいよ。」
耳元でそう囁かれて、私もうれしくなる。
うれしいけど……
「あの、恭兄さま?ここ、学校のそばなんで、場所、移しません?」
同じ制服の子達がいっぱい通るのが気になってしょうがないので、私はそうお願いした。
恭兄さまは私を手放すと、咳払いしてから車を発進させた。
耳まで赤くなってる恭兄さまの横顔が、愛しくてしょうがない。
私は、いつまでも見とれていた。
「さて。行き先はどこがいい?」
しばらくして恭兄さまが私にそう尋ねた。
「夜景の綺麗な高層ホテル?箱根の温泉旅館?軽井沢もいいかもね。」
へ?
何で?
……わざわざそんな遠く行かんでも……
私は苦笑した。
恭兄さま、ロマンティストやとは思ってたけど、そんなにステレオタイプやったとは。
「スノッブですね。私、家がいい。囲炉裏に炭を熾して、炉辺でゆっくりお話したい。」
「……わかった。じゃ、炭と食料を買い足して、帰ろうか。我が家へ。」
「はい。」
私は、恭兄さまの肩にもたれ、心地よさに目を閉じた。