ヒロインになれない!
「無理じゃない。」
恭兄さまが強く言い切った。
「恥ずかしい。」
「恥ずかしくない。」
「口惜しい。」
「……ああ、口惜しいよ。由未ちゃんを守ってあげられなかったことが口惜しくて口惜しくてたまらない。」
恭兄さまは、私を抱きしめる腕にさらに力を込めた。
「つらい想いさせて、ごめん。守ってあげられなくて、ごめん。」
また、そんな風に言う。
恭兄さまのほうこそ、謝る必要ないやん。
「恭兄さまには、関係ない。」
私はそう言って、恭兄さまの腕から逃れようとした。
けど、放してもらえなかった。
「関係なくない。自分のことよりつらくて苦しい。」
「……恭兄さまには、わからない。」
すると、恭兄さまは、力を緩めて私を解放した。
そして私の目を覗き込んで言った。
「わかってる。くやしさも、つらさも、……痛みも。」
……最初は、同情だと思った。
比喩的に言っているのかとも思った。
でも、恭兄さまの瞳が何かを物語っていた。
何を?
胸がドキドキしてくる。
以前、漠然と感じた疑問が蘇る。
恭兄さま、まさか……
「……恭兄さまも?」
やっとそう尋ねると、恭兄さまは自虐的に笑った。
「ああ。だからわかる。だから、由未ちゃんを守りたかった。」
そんな……。
心臓が痛い。
同じ想いをしたの?
恭兄さまは、囲炉裏に向かって座り直し、おもむろに口を開いた。
「中学生で編入してすぐ、力尽くで、やられたよ。夜、普通に自室のベッドで寝てたのにね。」
私は、息を飲んだ。
「口惜しくて、許せなくて、どうにか復讐してやろうと思って、僕は握力を鍛えた。」
握力?
「基本的には由未ちゃんと同じ。副睾丸は握力50kgで握り潰せたよ。」
!!!
「それっきり、誰も僕に手を出さなくなった。」
……そりゃそうだろう。
私は苦笑いした。
「それで、山崎先生、恭兄さまと私が似てるって言うたんや……」
「へえ?ことさん、そんなこと言ったんだ。怒っておかなきゃ。」
恭兄さまは、私を炉辺に呼んだ。
「おいで。どう?僕を嫌いになったかい?」
私は驚いて、首をぶんぶん横にふった。
「嫌いになんかなるはずない。かわいそうに。心細かったやろね。」
恭兄さまは微笑んだ。
「ありがとう。じゃ、今の僕の気持ちもわかるよね?」
わたしは、恭兄さまのすぐ横へ座るとその頬に唇を押し付けた。
不器用なキスに、恭兄さまはまばたいて、うつむき、笑った。
恭兄さまが強く言い切った。
「恥ずかしい。」
「恥ずかしくない。」
「口惜しい。」
「……ああ、口惜しいよ。由未ちゃんを守ってあげられなかったことが口惜しくて口惜しくてたまらない。」
恭兄さまは、私を抱きしめる腕にさらに力を込めた。
「つらい想いさせて、ごめん。守ってあげられなくて、ごめん。」
また、そんな風に言う。
恭兄さまのほうこそ、謝る必要ないやん。
「恭兄さまには、関係ない。」
私はそう言って、恭兄さまの腕から逃れようとした。
けど、放してもらえなかった。
「関係なくない。自分のことよりつらくて苦しい。」
「……恭兄さまには、わからない。」
すると、恭兄さまは、力を緩めて私を解放した。
そして私の目を覗き込んで言った。
「わかってる。くやしさも、つらさも、……痛みも。」
……最初は、同情だと思った。
比喩的に言っているのかとも思った。
でも、恭兄さまの瞳が何かを物語っていた。
何を?
胸がドキドキしてくる。
以前、漠然と感じた疑問が蘇る。
恭兄さま、まさか……
「……恭兄さまも?」
やっとそう尋ねると、恭兄さまは自虐的に笑った。
「ああ。だからわかる。だから、由未ちゃんを守りたかった。」
そんな……。
心臓が痛い。
同じ想いをしたの?
恭兄さまは、囲炉裏に向かって座り直し、おもむろに口を開いた。
「中学生で編入してすぐ、力尽くで、やられたよ。夜、普通に自室のベッドで寝てたのにね。」
私は、息を飲んだ。
「口惜しくて、許せなくて、どうにか復讐してやろうと思って、僕は握力を鍛えた。」
握力?
「基本的には由未ちゃんと同じ。副睾丸は握力50kgで握り潰せたよ。」
!!!
「それっきり、誰も僕に手を出さなくなった。」
……そりゃそうだろう。
私は苦笑いした。
「それで、山崎先生、恭兄さまと私が似てるって言うたんや……」
「へえ?ことさん、そんなこと言ったんだ。怒っておかなきゃ。」
恭兄さまは、私を炉辺に呼んだ。
「おいで。どう?僕を嫌いになったかい?」
私は驚いて、首をぶんぶん横にふった。
「嫌いになんかなるはずない。かわいそうに。心細かったやろね。」
恭兄さまは微笑んだ。
「ありがとう。じゃ、今の僕の気持ちもわかるよね?」
わたしは、恭兄さまのすぐ横へ座るとその頬に唇を押し付けた。
不器用なキスに、恭兄さまはまばたいて、うつむき、笑った。