ヒロインになれない!
……今更かな、とも思ったけど聞いてみた。
「今回の告発も報道も、恭兄さまが仕組まはってんろ?どうやって?」

「人脈を駆使して……と言えばかっこいいけど、単に功名心の強い駆け出し弁護士に頼んだだけだよ。新聞記者と警察の知人にも話を通して。」
……被害者達の弁護団の1人ってことか。
「ほんとはね、怒りに目が眩んで、反社会的勢力さんたちのお世話になろうかとも思ったんだけどね。」
恭兄さまが、自分の手をじっと見つめる。
「この手で制御しきれない力を借りるのは、やっぱり違う気がして、やめた。それに、そちらさんにお願いすると、由未ちゃんのお父さんに筒抜けになる気もするし。」

それは困る!
「でも……私のことも表沙汰にならへん?制服着てたし、和也先輩のファンて思われてるし、すぐ身元判明しちゃわへん?」
そしたら、やっぱり、恭兄さまとは結婚できない気がして……私は泣きべそをかいてそう聞いた。

恭兄さまは、私の肩を抱き寄せて微笑んだ。
「大丈夫。加害者の弁護士と既に司法取引済み。脳味噌まで筋肉なお馬鹿さんにもちゃんと理解できるように、しっかりと脅してもらってるから安心していいよ。」

「……安心、していいん?」
浮かんだ涙がほろほろ落ちる。

「そんなに、心配だったんだね……かわいそうに。もっと早くこうして話せばよかったね。」
恭兄さまが私を抱きしめて、背中をさすってくれる。

「……よかった……恭兄さまと結婚できひん、って、怖かってん。」
素直に吐露した私に、恭兄さまがムキになる。

「はあ!?何言ってんの?それはもう決定事項だよ。何があろうと、誰に反対されようと、由未ちゃんが合格したら、ちゃんと人を立てて結納入れるから!」
ゆいのう!
すごい、本格的に進めるんや!

私はドキドキした。
本気で受験がんばらなきゃ。

「じゃ、勉強する!」
私はそう宣言すると、自室へお勉強セットを取りに行きすぐに戻った。

いくらやってもきりがない受験勉強に没頭している横で、先にお風呂に入って来はった恭兄さまが、まだ乾かない髪のまま、筆を取ったり、焼き芋を食べたり、秋の夜長を楽しんでらした。


0時に恭兄さまが寝室へ入った。
私も、お風呂に入って髪を乾かしてから、寝室へ。

……ふふ、恭兄さま、寝ちゃった。
ドキドキしてたのに、ちょっと拍子抜け。

でも、ま、いっか。

はじめて、2つのお布団の隙間がなくなっていた。

それだけでもうれしくお布団に入った。


いつも通りお行儀よく寝てはる恭兄さまと手をつなぎたいな〜っと、そっと恭兄さまのお布団の中に手を入れる。

すると、ぐいっと手を引っ張られた。
え?
起きてはる?
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