先生と私
その日、わたし達は溶けかけの雪をザクザクと踏みながら、最後の通学路を歩いていた。
ゆいと一緒に帰るのも、これで最後。
「卒業かー。なんか実感ないなー」
「わたしもなんか実感ないな…」
こんな他愛もない会話をできるのも、今日で最後なのだ。
ゆいとこうやって隣に並んで歩けるのも、きっとこれが最後。
そう思うと改めて寂しくなった。
「…ありがとね、3年間」
と。
そんな言葉を、ゆいは突然言った。
あの優しい瞳で。
あのときと同じ、優しい笑顔で。
そうだ。
わたしも、ゆいに伝えたかったことを伝えよう。
わたしは決意を固め、言った。
わたしはゆいのことが好きで。
でもゆいは他の人のことが好きで。
わたしは女の子で、ゆいも女の子で。
それでも。
それでもわたしは
「わたしはゆいのことが、世界で一番大好きだよ」
わたしは想っていたことを全部伝えた。
胸が張り裂けそうな思いだった。
もう、今までみたいに話せることは、2度とないんだ。
呆然と立ち尽くしているゆいにそっとキスをし、わたしは分かれ道を行った。
溢れ出る涙をふりしきるように、わたしは走った。
ゆい。
きっと幸せになってね。