先生と私
放課後。
わたしはいつものように英語科教科室に行く。
いつものようにドアをノックすると、「どうぞ」という先生の声が聞こえる。
コーヒーの匂いが充満している部屋。
奥の方でパソコンをカタカタといじっている音。
ここには今、わたしと先生しかいない。
この時間がいちばん好きだ。
「今日は何の用事ですか」
「プリントについて質問があってきました」
「分かりました。そこに腰掛けなさい」
わたしはいつものように先生の向かいに腰掛けると、今日も無理矢理作ってきた質問をする。
でも、どんなに下らない質問をしても、先生はいつでも丁寧に教えてくれた。
「分かりましたか」
「はい!ありがとうございました!」
「暗くならないうちに帰りなさい」
「…あの、先生」
わたしは鞄からコソッとマフィンを出し、先生の机に置いた。
「差し入れです。良かったら食べてください」
先生はただひとこと、ありがとうございますと言った。
喜んでくれたんだろうか。
先生は感情をあまり表に出さない。
そういうところも好きなのだが。