先生と私
「え」
声がした方を見てみる。
そこにいたのは、竹内先生だった。
たしか、先生と大学の頃から仲良しだとか聞いたことがある。
「あー、やっぱり野中さんか。あいつなら今さっきここ出たばっかりだよ。なんでも実家に帰省するとかなんとか」
「……そうですか……」
すれ違いになっちゃったのか。
少し悲しくなる。
「あいつに何か用事でもあったの?なら先生から伝えておくけど」
「いえ、特に。大丈夫です。ありがとうございます」
「そう?なら良いけど」
そう言うと竹内先生はすたすたとまた歩いて行ったが、「あ」と、何か思い出したように戻ってきた。
「そうだ忘れてた。あいつから手紙預かってたんだ」
「手紙……?」
「うん」
そう言い竹内先生がくれたのは、真っ白な長封筒だった。
そこには「野中さんへ」と、あの人の綺麗な文字が書かれていた。