先生と私
着いた岬は、何もなくて、ただ空の灰色が辺りを包んでいた。
先生の姿は見当たらない。
まだ着いていないんだろうか。
それとも、もう………
「野中さん……?」
はっとして声がした方を見てみる。
「先生……!」
そこには先生の姿があった。
わたしは思わず先生のところに駆け寄り、抱きついた。
「先生、どこにも行かないで。わたしのこと置いていかないで。お願い。お願い……」
「………」
泣きながらそう言う私の頭を、先生はただ優しく撫でてくれた。