先生と私
「……手紙、読んだんですか」
わたしはただこくんと頷いた。
先生は「そうですか」と言うと、わたしのことを優しく抱きしめてくれた。
温かい腕で遠く風の音が遮断される。
この世界に2人だけしかいないような気がした。
「……ごめん」
先生はそう言うと、岬の先端の方へ歩いて行った。
待って。
行かないで。
わたしは先生の手を掴んで言った。
「ごめん。もう決めたことだから」
「でも……何で先生が死ぬ必要あるんですか」
「…手紙にも書いてたでしょう。これ以上生きてても君を不幸にしてしまうだけだし、君を苦しませてしまうだけだから」
「わたしは不幸なんかじゃないです。わたしはただ先生の傍にいられれば幸せなんです。だから……」
「それがダメなんです」
先生はいつもより大きな声で言った。
そんな声聞いたことがなくて、わたしは黙ってしまった。