先生と私
それから3日間。
わたしは先生と一言も口をきかず、英語科教科室にも一度も行かないまま卒業式を迎えた。
「卒業かー。なんか考えられないなー」
みゆきは卒業証書を片手に言う。
「わたしもなんか実感ないな…」
「まあゆいは一貫に行くもんねー」
「それもあるけど…ずっとみゆきと一緒にいられるものとばかり思ってたからさ」
「何それ、一生の別れみたいに言わないでよー」
あはは、とみゆきはまた笑いながら言う。
考えてみると、みゆきは三年間、いつだって笑顔だった。
いつも笑顔で、わたしを元気付けてくれて。
「…ありがとね。三年間」
わたしは心をこめていった。
みゆきはすこし頬を赤らめると、すこし真剣な表情になって言った。
「わたし、ゆいのこと好きだったんだ」
一瞬、言葉が出なくなった。
「…え」
好きって、どういう意味?
友達として?
それとも
「恋愛対象として」
「…………」
頭の中が真っ白になってしまった。
みゆきはわたしの方を真っ直ぐ見つめたまま続けた。
「だから公立に行くことにしたの。これ以上ゆいの傍にいるの、かなり辛いと思ってさ」
みゆきはわたしが全く知らなかった事実を淡々と語った。
わたしは言葉を失っていた。
「…ごめんねいきなり。でも最後にこれだけは言わせて。わたしはゆいのことが世界でいちばん大好きだよ」
それから、みゆきはちゅっとわたしの頬に口づけし、「じゃあね」とだけ言い、いつもの分かれ道を駆けて行った。
わたしはしばらくその場に立ち尽くしていた。
みゆきに口づけされた頬がジンと熱かった。