もしも氷上竝生がディアラバにハマったら
『DIABOLIK LOVERS』。割と雑にに説明すれば、イケメン吸血鬼達(氷上の観ているアニメ第一期では総勢六名)とゴシックでダークなラブファンタジーを繰り広げる作品だ。氷上はこれまで、いくつかの乙女ゲームやアニメに触れてきたが、この『DIABOLIK LOVERS』――略して『ディアラバ』が一番面白いと思った。男性キャラクターも格好いいし、主人公の女の子も可愛い。なにより氷上が興味を示したのは『吸血』――『血液』だった。男性達が吸血鬼な分、逃れられないのが主人公が吸血されるシーンだ。まあ、何というか――氷上は、吸血シーンが、滅茶苦茶好きだった。特に、自身の血液について思うところのある氷上は、『血液』というワードに敏感に反応する。それは、血液性愛とされるヘマトフィリアや吸血性愛と意味されるヴァンパイアフィリアとは真逆のものなのだろうけれど。
血液。彼女の体内を流れる血液は、通常のそれではない。それは『炎血』といって、その名の通り炎のように熱い――物理的な意味で――灼熱の血液だ。彼女は地球撲滅軍に入る際、当時まだ勢力を保っていた『不明室』とそれを指揮する左右左危博士に、身体改造を受けた。さながら本郷武とショッカーのように。この時、彼女の実の弟であった氷上法被――空々空の手によって亡き者にされている――にも同じ改造手術が施されたが、氷上竝生は弟の法被より程度の弱い『炎血』を注がれた。弟のコードネーム『火達磨』と姉のコードネーム『焚き火』から、そのグレードの違いは一目瞭然だろう。
氷上姉弟はその炎血で、地球撲滅軍の軍人として戦闘に参加してきた。火の玉や火柱を発生させたり、周囲の温度を上げたり、特定の物――あるいは者――を燃やしたりしてきた。弟の方が実力があったのは言うまでも無いが、しかし氷上竝生は、弱い『炎血』だからこそできる秘技を編み出した。――弟にはできないこと。それは、温度を下げることだ。氷塊や氷柱を発生させたり、周囲の温度を下げたり、特定の物――あるいは者――を凍らせてきた。彼女はそれを『氷血』と呼んだ。
紹介が長くなったが、まあ、そういうことである。要するに、軍人・氷上竝生は深夜アニメを見ていたが、ついさっき終わったため一息ついたということだった。
シャワーでも浴びて寝ようかと氷上は準備を始めた。このマンションの風呂はとても広く、綺麗なので気に入っている。
普通にシャワーを浴びて、一通りの入浴を済ませた。脱衣所へ向かう。薄ピンクのシュシュ(仕事では絶対使わない)で髮を一つにまとめ、彼女が寝巻として重宝している、まっ白の丈の長いワンピースを着用してさあ寝室へ行こう、と思った、その時。
「お前――誰だ?」
声がした。
硬直。
声は後ろから聞こえてきた。恐る恐る振り返る。男性が立っていた。
またも硬直。
その男性は、見覚えのある人物だった。
「――――――さ……逆巻アヤト、さ……さん」
『さ』で二回、噛んだ。一回目は単純な動揺からだ。二回目は、『ディアラバ』クラスタである氷上、『アヤト様』と呼んでしまいそうになったから。しかしこの場合は、『様』だろうが『さん』だろうが関係なかった。もっと彼女がクールビューティーだったなら、『名前を呼ぶ』などといいうミスは犯さなかっただろう。
「お前、なんで、俺の名前知ってんだ……?」
しまった。
血液。彼女の体内を流れる血液は、通常のそれではない。それは『炎血』といって、その名の通り炎のように熱い――物理的な意味で――灼熱の血液だ。彼女は地球撲滅軍に入る際、当時まだ勢力を保っていた『不明室』とそれを指揮する左右左危博士に、身体改造を受けた。さながら本郷武とショッカーのように。この時、彼女の実の弟であった氷上法被――空々空の手によって亡き者にされている――にも同じ改造手術が施されたが、氷上竝生は弟の法被より程度の弱い『炎血』を注がれた。弟のコードネーム『火達磨』と姉のコードネーム『焚き火』から、そのグレードの違いは一目瞭然だろう。
氷上姉弟はその炎血で、地球撲滅軍の軍人として戦闘に参加してきた。火の玉や火柱を発生させたり、周囲の温度を上げたり、特定の物――あるいは者――を燃やしたりしてきた。弟の方が実力があったのは言うまでも無いが、しかし氷上竝生は、弱い『炎血』だからこそできる秘技を編み出した。――弟にはできないこと。それは、温度を下げることだ。氷塊や氷柱を発生させたり、周囲の温度を下げたり、特定の物――あるいは者――を凍らせてきた。彼女はそれを『氷血』と呼んだ。
紹介が長くなったが、まあ、そういうことである。要するに、軍人・氷上竝生は深夜アニメを見ていたが、ついさっき終わったため一息ついたということだった。
シャワーでも浴びて寝ようかと氷上は準備を始めた。このマンションの風呂はとても広く、綺麗なので気に入っている。
普通にシャワーを浴びて、一通りの入浴を済ませた。脱衣所へ向かう。薄ピンクのシュシュ(仕事では絶対使わない)で髮を一つにまとめ、彼女が寝巻として重宝している、まっ白の丈の長いワンピースを着用してさあ寝室へ行こう、と思った、その時。
「お前――誰だ?」
声がした。
硬直。
声は後ろから聞こえてきた。恐る恐る振り返る。男性が立っていた。
またも硬直。
その男性は、見覚えのある人物だった。
「――――――さ……逆巻アヤト、さ……さん」
『さ』で二回、噛んだ。一回目は単純な動揺からだ。二回目は、『ディアラバ』クラスタである氷上、『アヤト様』と呼んでしまいそうになったから。しかしこの場合は、『様』だろうが『さん』だろうが関係なかった。もっと彼女がクールビューティーだったなら、『名前を呼ぶ』などといいうミスは犯さなかっただろう。
「お前、なんで、俺の名前知ってんだ……?」
しまった。