もしも氷上竝生がディアラバにハマったら
「何なんだよ、お前……。まあいい、とりあえずついてこい、話すことがある」
 アヤトは氷上の左腕を乱暴につかみ、引っ張った。移動するつもりらしい。
 一気に冷静になった氷上は、辺りを見回した。脱衣所は脱衣所だが、地球撲滅軍のマンションの、氷上の部屋のものではない。わずかに狭くなっているが、あのマンションのものよりも豪勢な装飾が施されている。

 訳が分からないが、氷上はとりあえず、されるがままに、引っ張られることにした。
 絢爛豪華な内装からでも『屋敷』と呼んで差し支えないような空間を、アヤトはずんずんと迷うことなく進んで行く。それは氷上がテレビの向こうで観ていたそれと、寸分違わぬものだった。いくつかのドアを通り過ぎ、廊下を乱暴に率先され歩く。それはお世辞にも、エスコートと呼べる代物ではなかった。

アヤトは、掴んだ氷上の左腕はそのままに、反対の手で今まで通り過ぎてきたものより一段大きなドアを開けた。長いテーブルに、男性が幾人か座っていた。どうやらそこは食卓のようだ。食器がいくつか置いてあるが全て空になっている。おそらく、食事の後なのだろう。アヤトは氷上の手を離す。

「よかった。まだ皆いたんだな」
「……アヤト、誰ですかその女性は」
 テーブルを囲っている者の中で、唯一立っていた眼鏡の男性が話しかけてきた。勿論、氷上にではなくアヤトに。
「知らねえ。俺が部屋に戻ろうとしたら、どっかから音がするから覗いてみたら見つけたんだよ」
「……訳が分かりませんね……。どういうことなんでしょう」
 そう言い、困ったように眼鏡を正す彼。氷上は彼を知っている。逆巻レイジ。――因みに、割と氷上の本命なキャラだったりする。
 しかし、名前を知っているからといって、先ほどと同じ轍は踏まない。氷上は出来るだけ、大人しく、黙っていようと思った。そう思った矢先。
「貴方は一体、何なんですか?」
と、レイジは今度は氷上に向かって話しかけてきた。誰、ではなく、何、と。
「どうしてこの家に?」
「……知りません。気づいたら居たんです」
 敬語を使ったのは、普段から『様』付けで呼んでいるキャラクター達に、いきなりタメ口をきいてしまうのに抵抗があったからだ。正直、氷上は逆巻家の彼らより焦っている。が、彼女のキャラクター、クールビューティーを貫き通すため、あえて平静を装った言い方をした。それが、平気で嘘をついていると取られたのは、またも彼女のミスだったのだが。
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