こじらせ女子の恋愛事情

腕時計に視線を向けると、１時間が経っていた。

窓の外からはセミの元気な鳴き声が聞こえる。

まだ話は続いているのかな…。

手に持っているオレンジジュースがだいぶぬるくなってきた。

１口も飲んでいないし、冷蔵庫に戻そうかと思っていたら、
「――森田和久」

彼――森田和久くん…いや、まだ小学生だった松坂くんが呟くように、自分の名前を言った。

「えっ？」

訳がわからなくて聞き返したら、
「お母さん、いつもお父さんからひどいことをされているんだ」

松坂くんが言った。

「ひどい、こと？」

だから松坂くんのお母さんは離婚相談をしに事務所へやってきたんだと言うことを私は思い出した。