こじらせ女子の恋愛事情
松坂くんが私の前から立ち去ろうとする。

そうだ、今しかない。

今がチャンスだ。

ここでチャンスを逃してしまったら、次はないかも知れない。

私はそう言い聞かせると、
「森田和久くん」

松坂くんの昔の名前を呼んだ。

その瞬間、松坂くんは驚いたと言うように私の方に振り返った。

「えっ…?」

私に昔の名前を呼ばれた松坂くんは訳がわからない顔をしていた。

「昨日、おじから全てを聞いたの。

私が中学2年生の時の夏休み、離婚相談をしに事務所へとやってきたあなたたち母子のことを」

そう言った私に、
「覚えてて、くれてたんですか…?」

松坂くんの声は驚きのあまり、かすれていた。
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