こじらせ女子の恋愛事情
「正確に言うなら、おじから話を聞くまであなたのことを忘れてた」

正直に言った私に松坂くんはファイルで顔を隠した。

「よかったです」

松坂くんは言った。

「よかったって、何が?」

そう聞き返した私に、
「忘れていたにしろ、浜崎さんが俺のことを覚えててくれて嬉しかったです」

松坂くんは答えた。

「俺、浜崎さんが初恋の人だったんです」

続けて松坂くんはそんなことを言った。

「初恋の人って、私が?」

聞き間違いじゃないかと思ったけど、彼は確かに私のことを初恋の人だと言った。

「家庭の事情で友達や先生にも言えずに悩んでいた俺に、浜崎さんは話を聞いてくれて励ましてくれました。

俺は、そんな浜崎さんの優しい性格を好きになりました」

ファイルで顔を隠して話をする松坂くんは、私がよく知っている彼じゃなかった。
< 167 / 183 >

この作品をシェア

pagetop