こじらせ女子の恋愛事情
言い返された松坂くんは参ったと言うように口を閉じた。

「まあ、その通りですね…。

もしかしたら、他の人だったかも知れないですね。

顔じゃなくて後ろ姿でしたし…」

松坂くんはブツブツと独り言のように呟いた。

やれやれ、バレずに済んだ。

私はホッと、心の中で息を吐いた。

「でも、彼女のふりはしてくださいよ」

そう言った松坂くんに、
「えっ?」

私は聞き返した。

「あの後で俺たちが離れてしまったら、ウソだったとかその場限りの出来事だったってことが相手にわかってしまうじゃないですか。

だから最後まで俺の彼女のふりをしてください」

松坂くんは握手を求めるように、私の前に手を差し出した。
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