こじらせ女子の恋愛事情
「――はい、つきましたよ」

松坂くんの声に、私はいつの間にか眠ってしまっていたことに気づいた。

しまった、車の揺れが心地よかったとは言えど寝てしまった。

幸いよだれを垂らしてはいなかったけれど、こいつに寝顔を見せたのかと思うと貞操観念のない自分が恥ずかしくなった。

しっかりしろ、やすえ。

間違ってもクソチャラ男に貞操を捧げるんじゃないぞ。

心の中で気合いを入れると、首を縦に振ってうなずいた。

「じゃ、下りますよ」

松坂くんが車を下りたので、私も車を下りた。

下りたとたん、潮の香りがする冷たい風が私の頬をなでた。

目の前には、真っ青な海が広がっていた。

えっ、海?

私はどうしてここに連れてこられたのか、理解ができなかった。
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