【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
部屋へ入ると、勉強なんて気分にはなれなくて一目散にベッドへと向かい、雪崩るようにドサッと倒れ込み、薄目で机の方を見た。


そういえば……いつでも電話して良いって言ってたよね。


机の上に置いた小さな名刺が目に入り、ふとタクさんを思い出す。


私はベッドからのろりくらりと起き上がり、深く考える余裕もなくスマホと名刺を手に引き寄せる。


そして、そのまま魔力に侵されるように番号を打ち、コールをした後にようやく後悔と理性に体が支配され、その魔法から解き放たれた。


「何、やってんだろ……私、馬鹿じゃない」


よくよく考えたらあんなの、あんな言葉その場限りに決まってるのに。本当に電話する馬鹿はきっと私くらいだよ。


はあ、と溜息を漏らし、電話を切ろうとした時、鳴っていたコールが途切れた。


出てしまったのだ。社長秘書と書いてあったし、きっと知らない番号でも彼は躊躇いなく出るのだろう。


なんせ、仕事の電話だったら出なかったら困る事になる。そんなの、子供の私でも分かっている事。


どうしよう、自分でかけてしまったのに、次の動作に困ってしまい、動けない。
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