【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
情事が終わり、けだるくて、タクのベッドの上でぐったりしていると、太陽の香りが漂って来た。
タクの掌。世界一愛しくて、世界一優しくて、世界一守りたい、そんな掌。
その掌が、私の伸ばし放題のセミロングの髪の毛を撫で、指先で梳く。タクは、私の髪の毛をこうして触るのが好きみたい。
細くて、だけど広くて頼もしいすべすべの胸板に頭を預けるとタクの心臓が心地良いリズムを奏でている。
長い睫毛を持った瞼が閉じて、仕事の疲労からかうつらうつらとしているタクを愛おしく思い、私はタクへべったりと引っ付いた。
こうしていれば、タクからもう二度と離れられなくなるのかな。そうだったら良いのに。
穂純さんからタクの心を、愛を略奪する事が出来れば、どんなに幸せな事か。
前、クラスメイトの女の子達が読んでいた雑誌に『恋愛は略奪も手段』なんて書いてあったけれど私には、そんな器量も、そんな事をして良い価値なんてものも無いんだよ。
だから、私がタクを愛して傷付くだけで良い。その傷さえも、私にとっては愛おしい。