【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
涙声の母の話は続く。この人を泣かせているのは間違いなく私。母親失格の烙印を彼女に押したのは、タクじゃなくて私だから。


「私もね、資格は無いとは思うけど、一応美姫の母親だから。美姫の笑顔が本物じゃないって事は、気付いていた。分かってたのよ」


母は詰まるような声で話を続ける。私も、息が詰まって喉元が苦しいよ。


「だけど母さんは最低だ。母であることより、女であることを選んだ。それだけあの人を、愛してしまった。一人の女としてあの人だけを見つめてしまった」


きっと前の私なら分からなかっただろうけど、今なら分かる。人を、何よりもその人を愛してしまい、全てを見えなくなる愛情という名の激流を。


だって私も同じ最低な女だもの。母親より、恋人より愛して、愛して愛して相手も自分も傷付けてしまうくらい愛しい人がいるんだもの。


だからと言ってこの人を愛してあげる事をすぐには出来ない。だけど、理解する事は一番出来るんだ。
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