【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
私が我慢出来なくて声を上げて泣き始めると、母も何故だか声を上げて泣き始める。


私達二人は、いつの間にか強く抱きしめ合い、お互いをお互いの涙で濡らした。


本音も、涙も、全てが私達親子には久しぶり……いや、初めてだったのかも知れない。


同じ場所に住み、同じ血を共有して、一番近い存在だったのに、近いのに誰よりも遠くにいた私達。


それは、お互いが忘れていた努力の距離だったんだと思う。


その距離を急速に縮めるように、ずっと、ずっと泣き続けた。


涙も声も、十八年間溜め続けた互いの全てが枯れるまで、私達は抱きしめ合った身体を離さない。


この涙が枯れた頃に、どうなるかはまだ分からないけれど、忘れていた努力をこれからしよう。


だって、私達は伝える事が出来る。互いが喋れる距離にいて、確かめ合う手段を持っているのだから。


それに気付かせてくれたタクは凄い人だよ。きっと本人は何でもないと言うだろうけど、私達は、そんなタクに助けられたんだよ。
< 151 / 211 >

この作品をシェア

pagetop