【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「ねえ母さん、あの人と結婚しても、いいよ。私、タク……歌川さんに相談して、一人暮らししても構わないし」
「美姫……どうして?お母さんと暮らすのはやっぱり嫌?」
涙も止まった後、私達二人は縮まった心の距離を喜ぶように話した。
「愛してるんでしょ?私、新婚の邪魔はしたくないし、母さんの気持ち、一番分かると思うんだ」
「無理してない?お母さんは、自分の幸せより美姫を第一に考える義務があるんだから。本音だよ?」
私は母の言葉にはあ、と溜息をつく。そういう考え方、この流れでしないで欲しい。違うじゃん。
「だからこそ、まずは幸せになってよ。……私もさ、その方がすっきりするから。ちゃんと向き合えるから」
無理はしてない。本心だ。母は、私の本心だと分かり、泣きそうな顔で「ありがとう」と囁いた。
何だ、話す事ってこんなに簡単な事だったんだね。仮面を被るよりずっと、簡単な手段。