【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
今日、私は少しだけ、前に進めたと思う。少しだけ、変われたんだと思う。


向き合ってこなかった母と、こうして向き合うことが出来たのだから。それが簡単な事だって知る事が出来たのだから。


今なら、今の私なら、後回しにして来た事も、有耶無耶に隠して来た事も、言葉にして伝える事が出来る力がある。


母を恋人のところへ行くように急かし、家から出し、私は逃げてきたものへ向き合うために考えた。


私が、向き合わなきゃいけないもの……あと二つ、あるよね。


いくら蓋を閉めて鎖をつけて、隠したって解決しない。話さなければ伝わらない。


傷付けて、傷付いて、そうやってもたもたしていても誰も幸せにはならない。


最大の裏切りでも、全て何もかもちゃんと話そう。そして、ちゃんと話を聞こう。光の照らされた道に這い上がる為に。


私はポケットに入れていたスマホを握り、一呼吸置くと、通話履歴から一つの番号を引っ張り出し、コールのボタンをタップした。
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