【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
私が蒼次郎に話したいことがあると告げると、蒼次郎の方が学校の校庭を集合場所に指定したのだ。


もっとカフェとか自分の家とかあっただろうに、わざわざ学校を指定した理由でもあるのだろうか。


「ゴメン……!俺からここに来るように言ったのに!待たせたよね?寒くなかった?」


集合時間から十五分くらい経った頃、蒼次郎が遅れてやって来る。


蒼次郎は暖かそうな黒のダウンジャケットに白いニット帽、マスクといつもより厚着だし、私服は気にしてオシャレな格好を選んでいた蒼次郎にしては、やけに微妙なチョイス。


「もしかして、本調子じゃない?」


「ん……ちょとだけ、な?でも大丈夫だから。心配しなくてもこうして動けるし喋れる」


きっと私が呼び出したことで無理させたんだ。それでも私を優先して、こうやって来てくれた蒼次郎。


私は充血したその目を見て、少しだけ罪悪感を覚えた。だって、私は蒼次郎のその想いを全部裏切ろうとしているのだから。
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