【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「じゃ、行くか。話、あるんだろう?すげー大事な話が」


「あ……う、うん」


蒼次郎はダウンジャケットに手を突っ込んで歩き出し、私はその後を追い掛けた。


そういえば……なんで、学校を集合場所にしたんのかは聞けなかった。


歩きながらそんな疑問を感じたけど、体調の優れない蒼次郎を余計に喋らすのもどうかと思い、切り出すのを止めた。


そうしているうちに私達は校舎の中へ入り、そして図書室の前へたどり着いた。


「ここなら誰にも聞かれないで二人で話せる。その方がいいと思ったんだ。それに図書室は……いや、そりゃいいや。とにかく中に入ろう」


蒼次郎はそう言うと、チャリン、と右手に握った図書室の鍵を鍵穴に差し込んだ。


いつの間に、ここの合鍵なんか作っていたのか持ち出したのか。蒼次郎は素行は良く先生にも好かれている分、こういう事をするのは抜け目ない。


ふと思い出す。中学校の時も蒼次郎が図書室の合鍵をこっそり作っていて、二人でよく貸切で話し込んだ事、卒業式の日にタイムカプセルにそれをこっそり入れていた事を。
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