【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
中学二年生の秋。当時私は虐めを受けていた。


女子特有の、ターゲットが一ヶ月ごとに変わるあの虐めに、中二の夏休み明けに私はロックオンされてしまったのだ。


元々口数は少ない方だった。中学に上がってからは母が一人の男性を愛してしまい仮面を被るようになったり、私も煙草に手を出したりと気持ち的に冷め始めた時期。


私達子供は人の気持ちに敏感。特に、負の気持ちに対しては。


同級生の女の子達が高い声で笑う姿を遠目に眺めて、何が楽しいんだろう、と無意識のうちに見下していたのを、彼女達もまた察知して、私をターゲットに絞ったのだ。


しかしこんな性格だから、別に虐めに対して気にしてもいなかったし、一人が嫌いでもなく。


事態が収まるまで出来るだけ雲隠れしていようと、昼休みや放課後、図書室で読書や勉強をするのが日課になっていた。


その当時、先輩から引き継ぎを受けて委員長をしていたのが蒼次郎。


図書委員のくせにいつも寝ているな、なんて蒼次郎を一瞥していたけれど、その日はふと、呼吸をするように始まった。


「ねえ、篝は毎日図書室に来るけど、このシリーズばっかり読んでるんだな」


ある日の放課後、いつものように図書室に入り浸る私に、蒼次郎がニッコリと話し掛けたのが初めての会話だった。
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