【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「…ったく、ばぁか。泣くなよ。泣きたいのは俺だっての。初めて泣かしたな、俺。四年越しだよ、やっとだ」


惣次郎は涙でぐちゃぐちゃになった私の顔を大きめのダウンジャケットから更にびろん、と出された灰色のシャツの長い袖でゴシゴシ拭う。


「でも、美姫をこうやって泣ける風にしてくれたのは、間違いなく歌川さんなんだよなぁ。俺にはきっと出来なかった。美姫が辛いのに気付かなかった俺には。つくづくあの人には敵わないな」


惣次郎は短い黒髪の前髪を左手で握り締め、眉をハの字にして笑う。


こんな、私のことを何よりも大切にしてくれた惣次郎だから、四年以上の長い間、友達として、恋人として過ごせたんだ。


「蒼次郎、ごめんね、ありがとう」


「おーおー、感謝しろ。そんで、これからは俺はお前の一番の親友。何でも話せ。俺は美姫が母ちゃんとの事隠してたのが、恋人解消よりもずっと悲しいっつーの」


この間あんなに泣いたのに、それでもまた流れる涙。


蒼次郎は私が泣き止むまでずっと傍に居てくれて、何度も何度も私の涙を袖で拭ってくれる。


あの日図書室行った事、話しかけてくれた事、友達に、恋人になれた事、今更だけど蒼次郎との時間は、全部宝物だったんだってようやく気付いた。
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