【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「よし、俺との関係もすっきりした事だし、思い立ったが吉日。今すぐ歌川さんに会って来いよ」


「え、今すぐ……?そんな、だって、タクにだって仕事とか事情とか、あるじゃない?」


蒼次郎の突然の提案に戸惑う。勿論決めてはいたけれど、今すぐだなんて、やっとの事で蒼次郎と話したばかりなのに。


戸惑いを隠せない私に、蒼次郎はまた、その射抜くような真剣な眼差しを向けて来た。


「お前は一回うじうじし出すとダメだろ?逆に、腹くくると大胆じゃん。だから今がいい。言いたい事整理する必要無い。隅から隅まで、全部ぶちまけろ。きっとあの人なら受け止めてくれる。何たって、俺の好きな人が好きになったとびきりの男だもんな」


タクが私に意外だと言ったその大胆な私の一面を、蒼次郎はずっと前から知っていたと笑い、それを踏まえて意見を言ってくれる。


「でも、私まだ……」


「あーもー!でもとかまだとか止め!自分で出来ないならスマホ貸して!ほら!」


友達の時に戻ったように、蒼次郎は遠慮無く強めに私に言うと、その勢いに負けておずおず差し出したスマホを奪い取り、暗証番号を一発で引き当てて操作を始める。
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