【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
気付けば時間を忘れて、沢山喋ってしまった。タクと話すのは私にとって刺激的で、未知の領域で、建設的だ。


《おっと、もうこんな時間ですか……美姫さんは学生なのですから、そろそろ寝なさい。背が伸びませんよ》


「はは、なんかじじくさいですね。背は多分寝てももう伸びないと思います。じゃあ……おやすみなさい」


穏やかなタクの声に、私も自然と笑いながら電話を切った。


なんだか久しぶりに、本当に自然に笑顔が出た気がする。力を込めることの無い、ごく自然な笑顔を。


今日出会った背広の王子様がもたらした不思議な魔法。その魔法をかけてもらえたお姫様……なんて器な私じゃないから、優しい王子様の大きな魔法の恩恵にあやかれた国民のうちの一人。とでも、思おう、かな。


目を閉じると、まだ耳にはタクの甘く柔らかい、優しい声が。瞼の裏には、声と同じに造られた穏やかな笑顔が残ってる。


あんな人が、現実世界に存在するんだ。そう思うだけで不思議な魔法は持続する気がした。
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