【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「そういう事言うなら切りますけど」


《わー!切らないで!用件があるから!》


わざとらしく嫌な声を出すと、慌てて大声を出す大喜。こういう部分は昔から変わらない。


変わらない部分と変わった部分。昔からの仲間達はそうして皆大人になっている。


《あのさ、店が年末年始休みでしょ?だから貸し切って、今からオリジナルメンバーで飲まないかってなってんの。タクさんも来るよね?》


オリジナルメンバーというのは、大喜、穂純、美琴とゴローとそれから僕も含めた五人。


どうせ行かないという選択肢は彼には無いだろうに、大喜の誘い方はわざとらしい。


「暇ですね。そのメンバーには既婚者が二人もいると言うのに」


《はは、まぁまぁ。全員でゆっくりって年に何回かしか無いじゃん?だから、タクさんも来てくださいよ。じゃ》


こうして僕の事を今でも振り回すあの四人。だけど、振り回される回数が減っていて淋しくもあったのが事実。


……いや、最近はそうでも無かったかもしれない。僕を静かな激流に溺れさせて振り回す存在が、最近僕を退屈な日常から遠ざけてくれていたから。
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