【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
ゴローは垂れ、いつでも眠そうにとろんと下がっているのに大きな瞳でじっと僕を見る。全部を見透かしているような顔だ。


「タクちゃんがそうだから、あの子も辛いんじゃない?」


「……違うと否定が出来ないのが腹立たしいところではありますね」


このメンバーにいくら取り繕って適当に返したところで見透かされてしまうから、僕は否定出来ない。


僕は二度も彼女に手を出した身だ。大人のすべき事じゃない。許される事だとも思ってない。


「そうだそうだー。俺なんか一番両方と会ってるじゃん?ただならぬタクさん達の男女の匂いにそわそわもするって。で?どこまで中途半端な事してるんですかタクさん」


「うわー、うちのメンバーきってのピュアボーイだった大喜にそんな事言われてるけど、タクさん美姫ちゃんに手出しちゃったの?最低!」


大喜や穂純にまで言葉で責められて、いよいよ洗いざらい吐いてしまうしか無い状況。


穂純が美姫の名前を出すと、胸の真ん中がチクチクと痛む。でも、この痛みは穂純の齎したものではなく寧ろ……。


「こんりゃ、忘年会っちゅうか暴露会になりそうな予感やの。まぁ、タクも腹括るしかないのう」


「助けてくださいよ、面白がってないで」


たった一人シラフの美琴にまで裏切られ、こちらはもう降参するしか無さそうだ。
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