【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
ふと気持を落ち着ける為に視線を泳がせると、机の上のスマホが、そのタイミングを計ったかのように震え出す。


慌てて伸ばしたスマホのディスプレイには『篝美姫』の三文字。僕が待ち焦がれた人の名前。


けれどこの間美姫をひっぱたいてしまったことを思い出し、左手と心臓がじん、と痛む。なかなか出られない。


「タクちゃん?早く出なきゃ!美姫ちゃんなんでしょう?出なきゃ怒るよ!皆で怒る」


「ゴロー、しかし、僕は……」


迷う弱い僕。この電話に出たら美姫に何を言われるだろう。嫌われて当たり前の僕。もしかしたら、この電話で罵倒されるかも知れない。


そうでなくても僕に、美姫と話す資格なんてもう……。


「話す資格なんて無いとか思ってるならふざけないで下さい!タクさんが美姫ちゃんにした中途半端は最低だけど、資格があるかどうかは美姫ちゃんが決める事です!かけてくれたんだから、貴方は出て!」


穂純に妙に強い眼差しで言われ、僕はドキっと心臓を波打たせてスマホを持ち席を立つ。


「もしもし」


ようやく覚悟を決めて少し震える指で通話ボタンをタップして応答すると、美姫じゃない、違う人物の声が耳元に響いた。
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