【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
《あ、歌川さん?俺、この間店に美姫といた者ですが》
「蒼次郎君、でしたね?どうかしましたか?」
電話の相手は美姫の恋人の蒼次郎。それを認識すると、何故だか僕の目頭が熱くなる感覚に陥った。
年末に恋人が共にいるのなんておかしな事じゃない。なのに、僕の感情は狂っている。美姫と蒼次郎君が一緒にいる事に苛立つなんて、僕はおかしい。
《急用があります。今すぐ、美姫が初めてバイトした日に歌川さんが連れて行った海に来て下さい。来るまで待ってますんで。美姫が凍えても知りませんからね》
「え……ちょっと、え?」
まるでシャワーを浴びせるように用件だけ伝えられ、僕は戸惑う事しか出来ずに答えに口ごもる。
《恰好悪い事しないで下さい。美姫も、俺も失望させないで下さい。……美姫を泣かせないで下さい》
何があったのかは想像出来るようで、想像出来ない。彼の言葉には美姫への愛で満ちていて、なのに、手放す覚悟を決めた言葉。
《美姫泣かしたら俺が許しませんからね。……それじゃあ、後はお願いします》
最後まで有無を言わさないと言わんばかりに言った蒼次郎君は、もう僕の声を聞かずして通話を切った。
そのあっという間に終わった通話に驚いて、少しの間フリーズしてしまう。
美姫、君を大切に思っていた子は、君が思うよりもずっと純粋に、ただ君だけを思っている男らしい子だったんですね。
「蒼次郎君、でしたね?どうかしましたか?」
電話の相手は美姫の恋人の蒼次郎。それを認識すると、何故だか僕の目頭が熱くなる感覚に陥った。
年末に恋人が共にいるのなんておかしな事じゃない。なのに、僕の感情は狂っている。美姫と蒼次郎君が一緒にいる事に苛立つなんて、僕はおかしい。
《急用があります。今すぐ、美姫が初めてバイトした日に歌川さんが連れて行った海に来て下さい。来るまで待ってますんで。美姫が凍えても知りませんからね》
「え……ちょっと、え?」
まるでシャワーを浴びせるように用件だけ伝えられ、僕は戸惑う事しか出来ずに答えに口ごもる。
《恰好悪い事しないで下さい。美姫も、俺も失望させないで下さい。……美姫を泣かせないで下さい》
何があったのかは想像出来るようで、想像出来ない。彼の言葉には美姫への愛で満ちていて、なのに、手放す覚悟を決めた言葉。
《美姫泣かしたら俺が許しませんからね。……それじゃあ、後はお願いします》
最後まで有無を言わさないと言わんばかりに言った蒼次郎君は、もう僕の声を聞かずして通話を切った。
そのあっという間に終わった通話に驚いて、少しの間フリーズしてしまう。
美姫、君を大切に思っていた子は、君が思うよりもずっと純粋に、ただ君だけを思っている男らしい子だったんですね。