【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「同じ事、考えていました」


正直にそれを話すと、タクの丸っこい瞳が一瞬見開き、そしてくにゃりと歪んで弧を描く。


「……せっかく世界に二人きりなので、僕にも誓わせてくれませんか?」


「え?あの……!?」


そして、すくっと立ち上がったタクは、私の手を取り立ち上がると、ステンドグラスの光が幻想的に広がる方へ、先程まで母達が永遠の愛を誓い合っていた祭壇へ、私を導いた。


まるで夢みたいな出来事。夢なら覚めないで。……いや、本当は夢で無ければ良いのにって心の底から思っている。


タクは祭壇の前て立ち止まると、私と向き合い、そして日常の動作をこなすように、ごく自然に私の前に跪いた。


そのゴツゴツの骨張った掌で私の左手を掬うように持ち上げると、号数なんて話したことも無いのに、私の薬指にピッタリと嵌る、ピンクゴールドの真ん中にダイヤの付いた指輪をそっと着け、整い過ぎたその顔を持ち上げた。


「仮予約、させて頂けませんか?」


「仮予約、ですか?」


思っていたのとは少し違う言葉に、私はオウム返しをして尋ねる。


私のたった一人の王子様は、その問いに目を細め、微笑む。


色とりどりのステンドグラスの光を浴びたタクは、比喩じゃなくて本当に王子様のよう。
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