【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
個性と主張
あれから数日。ついに私の初めてのバイトの日曜日になった。
朝から『PURE EMPEROR』本社に向かうと、紺色のスーツ姿で背筋をしゃんと伸ばして待つタクが待っていた。
「おはようございます。朝早くからありがとうございます。履歴書は僕が預かりましょう」
「あ、ハイ」
私は持参していた履歴書をタクに渡し、タクの車に乗り、お店へ向かう。
女子達の間で話題になってはいたが、ミーハーじゃない私は実際そこへ行った事が無い。初めての場所でのバイトに、多少緊張もする。
「チェックリストはこれです。美姫はこのチェックリストに従って五段階の点数をお店や従業員につけて下さい」
タクの説明を聞き、仕事の内容をメモしながら、運転するタクの横顔をチラリと見る。
運転をするタクの横顔は、太陽でキラキラと輝いているように見える。
ファッション雑誌なんかに、車を運転する男性は恰好いいと書いてあるが、本当にそう。
暖房で温まった車内は彼には少し暑いようで、ジャケットを脱ぎシャツを捲ったタクの腕は、華奢だと思っていたのにことのほか筋肉が付いていて、色っぽい。
緊張のドキドキと、そんな色気へのドキドキで変に肩に力が入りながら私は、仕事内容のメモへともう一度視線を落とした。