【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「あ、笑いましたね?……やっぱり君は笑っている方が良い。勿論偽物の笑顔じゃなくて、本物の方でね」


タクはそう言うとふんわりと微笑んで見せて、そして私の頭を撫でた。


「お願い、考えといて下さい。多少無茶なお願いでも聞きますから」


タクはそう言葉を残すと、車を走らせて去ってしまった。我が儘を言うならもっと、タクと一緒にいたかったな。


もうタクには、お礼してもしきれないものをもらったのに、いいのかな。こんなに温かなプレゼントをまたもらってしまっても。


そんな風に思いながら重たいドアを開く。


この扉を開けば、私はまた仮面を被る。同じ冷たい仮面を被った肉親と、仲良しごっこが始まる。


それでも耐えられる。今日、私は一人じゃないと知ったから。私の事を大切にしてくれる大人もいるんだって気付いてしまったから。


この時私は幸せな感情いっぱいで、まさか『なんでもお願い券』であんな契約をしてしまうなんて思っても見なかった。
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