【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ



今日のバイトも終わり、本社にいつものように提出する。バイト自体にもお店自体にもなんとか慣れて、ようやく余裕が出たな、なんてぼんやり思いつつ、少しだけ淋しい気持ちになる。


今日はタクに会えなかった、な。タクだって忙しい人だから毎回会えないのは当たり前だし、零さんがこの仕事をタクから私に与えたのだって、タクの時間を作る為だって分かっているのに。


そんな感情を持つ自分に少し嫌悪感を抱き歩き出す。


この嫌悪感は何度心の中で蒼次郎のことを思い出しても、タクの太陽の香りが蒼次郎のミントの香りを消し去るから。


馬鹿みたいに後生大事に持ち歩いているタクからもらった『なんでもお願い券』が更に私を蒼次郎から遠ざけるんだ。


私のこの恋心はあってはならないもの。だって私には蒼次郎がいる。タクの中には……穂純さんがいるんだから。


その事実は消したくても消せないもの、消せない事実。なのに、このあってはならない恋心は今も私を独占し、胸を焦がして行く。
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