【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「ああ、なんかそろそろクリスマスシーズン突入だから忙しさがはんぱないらしいんだ。だから、二部の時間は手伝い」


表情だけで思っている事を読んだらしい穂純さんは、どう見ても可愛らしい男性にしか見えない笑顔で私に言う。


「え……でも、プリンスって男店員のお店ですよね?」


私が尋ねると、穂純さんはくりんくりんの目を眩しいくらいに輝かせて笑う。


「実は、五年前、タクさんや大喜と一緒に男として働いてたんだ。零さんに借金作っちゃってさぁ。んで半ば強制送還された先があそこだったんだー。ほら私、俺って言っとけば声もハスキーだし、見た目も男の子じゃん?」


事実、今の穂純さんをお世辞にも女性だとは思えない。どこからどう見ても中世的な男性だ。身長も低くはないし、足の長さや細さも男性らしく見えてしまう。


その外ハネの男の子みたいな茶髪のパーマをくしゃくしゃと掻きむしる穂純さんに納得する。


そうか、だから五年前のあの四人はこの人に助けられたんだ。


そうして共に長く時間を共有して、この人の無尽蔵の愛の光に溶かされたから、今はああやって優しい世界の住人でいられるんだ、と。
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