総長と女番長 ~ときどきお兄ちゃん~
私は結城の横を歩きながら、

ほっんとに、可愛すぎ!!必死すぎでしょ。

って言ってやった。結城は照れてる。

てか、あのブロンドのモヒカンがよく隠れたねと言うと、大変だったと笑っていた。

体育館を出た私たちは、今度は結城と二人で模擬店を回った。

周りからは暖かい目で見られてる。

少し緊張はするが戸惑いはない。

そこに浩紀兄さんが現れた。

結局その子を選んだんだね。って。

うん。浩紀兄さんは笑ってくれていた。

そして、邪魔しないようにと少し距離を取りながら後ろを歩いてくれている。

イベントが終わっても文化祭が終わってない以上、まだねらわれるか、わからないと、浩紀兄さんなりに気を使ってくれているようだ。

言っとくけど…今回あなたを選んだのは…結城が頑張ってたからで、イベント盛り上げる為に選んだのよ。あなたを好きだからとかじゃないんだから勘違いしないでよね!

と私は言ってしまった。

そんなわけないのに。素直じゃないな私…

そんなんわかってる。けど、言えない…。

結城はうん、としか言ってくれなかった。

しばらく二人の間に重い間が流れて、結城は私に言った。

何でアイツ、ついてきてんの?って。

浩紀兄さんのことを言ってるのはわかってる。

けど、私はとぼけてみた。アイツって誰?って。

とぼけんなよ。本気で…こないだもはぐらかしたじゃん

と不愉快そうに言う結城が可愛くて…

私は小さく笑った。

妬いてる?なんて聞いてみた。

うん、妬いてる…

めっちゃ素直な反応…なんて言っていいのかわからなくなった。

いいよ、わかった。ほんとのこと言うわ。彼について…

と私は言って一呼吸ついた。そして、

彼は…この学校のOBで、歴代最強と言われた名高き番長。
そして、私のお父さん違いのお兄ちゃん、浩紀兄さんよ。
今日は私のボディーガードとしてお守りを会長から頼まれてるらしくて…

と言った。

結城は少し戸惑っているようだ。

眉間にシワがよってる。

私は気にすることなく歩く。ふと、結城が足を止めた。そこは焼きそばの模擬店の前。

食べる?と聞けばうん、と返ってきた。

そういえば…私もお腹すいたな~と思い列に並んだ。

ソースと醤油の香ばしい香り…急にすき始めたお腹は一気に欲を丸出しにしている。

よだれがたれそうになるのを必死にこらえてる私の横で結城が笑ってる。

うっ、恥ずかしい…

さっきもまわってたのに食べなかったんだ?

と言われた。

それどころじゃなかったのよ!追い回されて、喧嘩して…

私がそういうと、結城は眉間のシワを深めた。

2校同時に絡まれて…蓬莱と、エンスパイヤね…まぁ、浩紀兄さんのおかげで救われたけど…かなりの大人数で、相手大変だった。まだ狙われてるかもしれないから覚悟はしといて?

と私が言うと、わかった。と結城は言った。

そんな話をしてるうちに順番が来て私たちは焼きそば を二つ買った。

少し離れたベンチに腰かけて、焼きそばを頬張る私たち。

それを遠巻きに見てくれている浩紀兄さん

焼きそばを食べ終えた私たちは立ち上がることはせずしばらく話すことになった。

たいした話はしていない。普通の日常会話程度。

文化祭の話とか…会長の話とか…。

結城は笑顔で頷きながらうんうんって聞いてくれてた。

私はホントに心地よくて、そんな優しい結城に甘えてた。

あー、やっぱ私、結城のこと改めて好きだなぁ~なんて思って見つめていた。

結城が顔を赤くしながら、何?と聞いてくる。

何もないよ…。私はそれしか言えない。

恥ずかしい…少しうつむいた。二人だけの時間が流れてる気がした。

けど、そんな時間はすぐに潰された。

奴らはまだ、私のことを追っていたのだ。

それに気がついて、浩紀兄さんが逃げるように声をかけてくれた。

私は結城の手を離さないようにしっかり握ると走り出した。

走りながらウィッグを外した結城。

いつもよりおとなしめのブロンドモヒカンが姿を現した。

私は吹き出しそうになった。モヒカンで、ワンピース…笑いをこらえるのに必死。

笑うなーと結城は言った。ゴメンと一応謝ってみた。

そんなことはほんとはどうでもいい…。ただ今は結城の手を離したくなかった。

けど、そういうわけにはいかない。
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