俺様当主の花嫁教育
そりゃ、御影さんには申し訳ないけど、身体の一部分がぶつかっただけでそんな大騒ぎしなくても……。
そう思う私が非常識なのか、とも考えてしまう。


そして、案の定……。


「まあ、事実がどうあれ、あれだけの客人の前で『辱しめた』んだから、志麻ちゃんに対してあんたは責任取らないと」


千歳さんがシレッとそんなことを言ってのけるから、私はギョッとして大きく顔を上げた。


「ち、千歳さんっ……!?」

「はああ!? 俺がこんな貧相な女になんの責任とるって言うんだよ! 何度も言うが、俺は『辱められた』方で……」

「ちょっ……! 貧相って、あんまりじゃない!?」


言われっ放しで気持ちも麻痺して来た。
さっきからの御影さんの暴言が、徐々に心を逆撫でし始める。


畳に手をついて、腰を上げながら御影さんの背中に食いつくように反論した。
はあ?と眉間に皺を刻んだまま、御影さんが私を振り返ってねめつける。


「貧相だろうが。お前、気づいてないのか? 気崩れて袷が緩んでる。ついでに、暴れまくって裾も」

「はっ……」


冷静にそう言われて、私は慌てて胸もとに手を置いた。
それほど酷く崩れてるわけじゃなくても、確かにさっきより緩さは感じる。
それもこれも、御影さんがあんな乱暴に私を跳ねのけたせいだ。


「あ~、はいはい。志麻ちゃん、後で直してあげるから。それから東和! あんたは腹括りなさい。どっちにしろそのうち父様に呼び出されて志麻ちゃんのこと説明しなきゃいけなくなるんだから」

「……え?」


本家のご当主であるお父様に、説明?
< 38 / 113 >

この作品をシェア

pagetop