俺様当主の花嫁教育
御影さんがクルッと身体を回転させて、目を白黒させる私に向き合った。


「言っとくが、俺は茶道界きっての名門、御影の嫡男だ。その俺の嫁は、容姿端麗・器量良しで、政財界に名を轟かせる名家の血筋の女じゃなきゃいけないんだよ」


まるで宇宙人と話しているかのような、置き去り感満載の気分だ。
御影さんがどんなにすごい人かはわかるとしても、どんな女性をお嫁さんにするかなんて、私になんの関係があるんだろう


「どの条件も兼ね備えていないうえに、日本文化のいろはも知らないお前じゃ、本来俺の隣を歩くのもおこがましいんだ、それをよく覚えておけ」

「……だから、何が言いたいんですか」


意味がわからないなりにも、なんだかすごくムッとする言い方だ。
それは姉の千歳さんでも同じ意見なのか、頭痛を抑えるように額に手を当てている。


「不本意だが、短期集中で俺が仕込んでやる。……が、ダラダラ付き合うつもりはない。お前をこてんぱんに振った西郷の結婚式がリミットだ」

「は？」


どうしよう……。
本当に私には御影さんが何を言いたいのかわからない。


なんだか妙に心細くなって、私は千歳さんに助けを求めるように、捨てられた子犬になった気分で視線を向けた。
なのに、千歳さんはとても満足気にほくそ笑んでいる。


「ふふ、よく言った！　東和！　『恋多き本家の嫡男』も、とうとう年貢の納め時を迎えるのね！」


そして、千歳さんの言葉も全く意味不明だ。
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