俺様当主の花嫁教育
想像するだけで、気分爽快。
私の表情は一瞬緩んだ。
それをしっかり見透かされて、千歳さんが私の背中をバンッ!と思いっきり叩く。
思わずウッと呻きながら、私の身体が前につんのめる。


「……何をひそひそ話してんだよ」


勢い余って畳に両手を突く私の前に、スッと御影さんがしなやかな指を伸ばして来た。
その指が私の顎に到達して、くいっと持ち上げられる。


片膝を畳について、御影さんが私をジッと見つめていた。
その瞳の美しさと思わぬ至近距離に、不覚にも胸がドキッと騒いでしまう、けど……。


「明日からこれでもかってくらいしごいてやる。今のお前じゃ御影の嫡男の妻にふさわしくない。人間として失格だ」



御影さんの、私に対する人格否定が、とどめを刺した。


「み……見てなさいよっ……!!」


やってやる。やってやる。
西郷さんの結婚式に出席するその時まで。


御影さんを我が物顔で利用して、非の打ちどころのない大和撫子になって、復讐する。
私をこの上ない屈辱を味わわせた御曹司二人を、打ちのめしてやるんだから!!


顎を持ち上げられたままで、御影さんをキッと睨み上げる。
眉を寄せて私を見下ろす御影さんの視線と、宙で交じり合って火花が散る。


こうして、戦いの火蓋は、切って落とされた。
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