病み姫アリスの華麗なる日常
「え? 今 なんて言った?」
秋人がメデューサを見て石になったように固まっている他の部員のかわりに口を開いた。
「ここの部に入りたいんです。わたし」
入り口の前に立っているのは、やや小柄で
長いストレートの黒髪とパッツン前髪が特徴的な どこからどうみても女子だった。ぱっと見は大人しそうな子である。
空耳かと疑ったが、もう一度確認しさらに固まる一同。
目をパチパチ見開きながら
お互い見合わせる。
これはアイコンタクトという高等手段だ。
しばらくお互いを見合ったものの、
最後は秋人に視線が集中した。
秋人はすこし困惑しながら返答した。
「えっと、すいません。
うちの部、
女子は募集していないんですよね…」
(言いづらいこと言わせやがってチクショー)
女子の顔が 一瞬で、しゅんとなった。
(あーもー、嫌な役だなー)
そこは『断女子』の誓いのためといえど、
やはりみずしらずの女子を傷つけるのは気分のよいものではない。
秋人は、内気なオタクでも、いざというときは皆に頼りにされているふしがあった。
「 ……で、ござる 」
ボソッとした声が発された。
パッツン女子が聞き返す。
「 え ?」
すると、今度ははっきりとした大きな声で
時夫が話し出した。
「 ただいま、女子部員も絶賛募集中でござ るよ!
やだなー、秋人氏。忘れたでござるか?」
男子たちは 唖然としたが、一瞬で状況を理解した。
うんうんとしきりにうなづく矢島。
秋人だけは、少し困惑気味だったが、彼は空気を読む性格だった。
「 あ、ああ。
そうだったね、ごめんごめん。 」
時夫よ。
先程までの『断女子』の誓いとはなんだったのか。だがもはやそれをつっこむ人間は皆無であった。