明治あやかし物語
氷雨隊 Hizametai
新聞を大きく広げて顔が隠れている少女は、長い髪の毛をお下げにし、後ろ髪に蜜柑色(みかんいろ)のリボンを留め付けている。
矢羽模様の小袖に海老茶色の袴。
足元は黒のアングルブーツ。新しい靴なのか光沢を放っており、古風な袴姿とのギャップが甚だしい。
そんな少女の名は、織部 翠(おりべ すい)
明治を生きる女学生の一人である。
翠は新聞を読んでいくうちに、どんどん新聞に顔が近づいていく。
そして、大きな音をたてて新聞を木の机に叩きつけた。
糸のように細い髪の毛が揺れ動く。
木の机はミシッ!と軋み、周囲の視線が一気に音の原因、翠へと注がれた。
翠の眉は釣りあがっていた。