3年後の約束。
観覧車。


水がかかるアトラクションが終わり、歩いている私と向井。


向井「楽しかったな!あれ!」

私「いや、それよりも寒いんですけど…。」

向井「こんなんで寒いなんてしょぼいなあお前。………さむっ。」

お前も寒いのかよ!てか、おせえよ!

ほんとにバカなのかアホなのか天然なのか意味のわからない向井。


向井「寒いから観覧車行こうぜ!」

観覧車?!ふたりっきりで?!
なんか緊張する…。

でも寒いよりいっか…。


私たちは観覧車に乗ることにした。


向井「ふぅ~寒かった。」

そう言って私と向かい合って座った。

外の景色を見てみると、もう夕方でオレンジの夕日が綺麗に見えた。

私「綺麗だね。」

向井「そうだな。」


しばらくふたりで景色に見惚れていた。


向井「ねえ、なんでお前俺のこと向井って呼ぶの?」

唐突にそんなことを聞かれ、私はびっくりした。

私「な、なに急に。」

向井「なんで?」

私の言うことには無視してまた聞いてきた。

私「別に意味なんてないけど…。普通に名前呼んでるだけじゃん。」

向井「お前が呼んでるのは向井。それ名字。俺の名前は遊太。なんで遊太じゃないの?」

確かにそうだけれども、別に意味とかなしに普通に呼んでるだけだし…。

私「別に意味ないけど…。成り行き?」

向井「ふ~ん。啓のことは普通に呼び捨てなのに?」

だから別になんもないって言ってんじゃん!
しつこいな。
なんでそんなにつっかかってくるんだ。

私がこれ以上言うことがなくて黙っていると、


向井「遊太って呼べ。」

急に命令口調。

そう言われると従いたくなくなるのが人間。

私「は?やだ。」

向井「は?なんでだよ。」

私「向井だって、私のことお前呼ばわりばっかしやがって!名前呼ばれるだけありがたいと思え!お前だって私を名前で呼べ!」

ここで私も反撃してやった。
これでどうだ。

すると、

向井「遥希。」

あっさり名前で呼んできた。
まっすぐな目で見つめて。

急に名前を呼ばれて思わずドキっとする。
そのまっすぐな目にもドキドキする。

向井「ごめんな、名前で呼んでなくて。なんかいまさら照れくさくて。」

優しく言われると調子が狂う。

私「いや、べつにだいじょう…」

向井「はい、じゃあ名前で呼んで。」

向井は私の言葉を遮ってニヤニヤと笑みを浮かべながら言ってきた。

なんだこいつの態度の変わりようは。

向井「早く。」

私「ゆ、ゆうた…。」

私は恥ずかしくて小さな声で言った。

向井「え~?聞こえないな~?」

くっそぉ…。
腹立つなこいつ…。

私「遊太!!」

向井「よくできました。」

そう言って向井…じゃなくて遊太はにこっと笑った。






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