恋がしたい。ただ恋がしたい。

***

昼のピークを過ぎた『Milkyway』の店内は、人もまばらだった。土曜日だというのに珍しい。


結局休日出勤までして手掛けた仕事もほとんど進まなかった。


亨のLINEが気になっていたのはもちろんだけど、純くんや志田ちゃんが来るのではないかと職員室の入り口ばかりを気にしてしまい、今何をしていたんだっけ…と何度も確認をする羽目になってしまった。


もう、こんなもやもやした気持ちには、とっととケリをつけてしまいたい。



…だけど。



約束の15時よりだいぶ早めに到着して、お店の前に立つこと早5分。


私は今、慎重に店内の様子を窺っていた。


『Milkyway』はパンとケーキを販売しているショーケースがある店舗と、カフェスペースが分かれている。


ヤツは店舗の奥にある厨房にいるはずだ。


いつも会いたくないんだけど、今日ほどヤツの顔を見ないで済む方法は無いのかと思ったことはない。


何で『Milkyway』なのよ、亨…。


話がどんな方向に転がるかは分からないけど、見つかってうっかり話なんて聞かれてしまった日には、アイツの伝言ゲームの格好のネタにされてしまうに違いない。


どうかヤツに…小山奏一に見つかりませんように…。


このまま店の前で亨を待って二人で入るよりも、こっそり入って目立たない席で待っていたほうが見つかりにくいはず。


覚悟を決めて、他のお客さん達が入って行くのに紛れ込むように、そっと店内へと足を踏み入れた。


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