恋がしたい。ただ恋がしたい。

「…いいですよ、亨さん。ばれちゃったみたいだし。」


彼女はずっと私達が座っているテーブルの横に立っている。


私への視線と同じく、話し方も自然と見下すような口調へと変わっていた。


「亨さん、私にプロポーズしてくれたのに、あなたの事ばっかり気にしてずっと落ち込んでたから、見ていられなかった。だから、私じゃ代わりになりませんか?って…どうしたらあなたの事忘れてくれますか?って聞いたの。」


「そしたら、あなたの家から自分の痕跡を全部消したいって、そしたら私との事も前向きに考えられるかもって…亨さんがそう言うから私…。」


あまりにも勝手な言い方に、怒りを通り越して呆れるしかなかった。


「…だからって、人の部屋に勝手に入っていいと思ってるの?」


亨も亨なら、この人もこの人だ。


「だってあなたが途中で帰って来て…亨さんに別れたくないなんて言い出したら嫌だったから!」


明らかに常識外れの事をしているのに、自分が正しいのだと、恋をしているのならこれがまともな感情なのだと押し通そうとする姿に目眩すら覚えてしまう。


あなたの言い分なんて聞いてない…

亨の言い訳なんて、もっと聞きたくない。


もう、別れ話どうこうの問題じゃない。


だって、これって…
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