恋がしたい。ただ恋がしたい。

「プロポーズはもちろん断るつもりだったけど……でも…良かったの?きっと、亨は裕介くんの事、私の彼氏だって誤解してるよ?」


亨があれで諦めてくれる保証なんてどこにもないし、また巻き込んでしまうかもしれない。


「いいんだよ。僕がそうしたかったんだから。」


私の不安だってお見通しで、『安心してよ』とでも言うようにふわりと微笑んだ。


裕介くんは私に対してとても甘い。いつも甘すぎるくらいに甘やかしてくれていると思う。


親友の弟で、私とも気の置けない友達だから、私の考えてる事なんて筒抜けなんだろうけど……正直、こんなに甘やかされてていいのかなって考えてしまう。


…だけど、普段人に頼られてばかりの私には、裕介くんの甘さはとても心地よい。


心地よすぎて甘やかされるままに、不思議と受け入れてしまっている自分がいる。


***

話をしながら歩いているうち、あっという間にマンションに着いてしまった。


「…着いちゃったね。」


何気なくボソッと呟いた一言は、やけに残念そうな響きを持っていた。


たぶん私は、この手を離して欲しくないって、まだ繋いでいたいって思ってるんだ…。


そんな事を思うのは初めてで、戸惑ってしまう。
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