恋がしたい。ただ恋がしたい。
今まで付き合ってきた人達ですら、『離れがたい』って思った事なんて一度も無かった。
純くんと付き合っていた時は、いつこの手を離されてしまうんだろうって…そんな事ばかり考えて、自分からは手を繋ぐ事も手を伸ばす事すらできなかった。
信じられない。
ありえない。
ぐるぐると頭の片隅で、そんなフレーズが回りはじめる。
きっと、昨日から色んな事があったから、必要以上に裕介くんに甘えたくなっちゃってるんだ。
だから……
そんな訳が無い。
「…ちゃん。香織ちゃん、ストップ!」
「……えっ?あっ!わっ!」
気がついたらパンプスを履いたまま玄関を上がろうとしていた。
慌てて足だけは止めたけど、上がろうとした身体は止めることができずに前のめりになる。
倒れそうな身体を、ポスン、と裕介くんが受け止めてくれた。
「……ありがと。」
「もうちょっとだから頑張って。とりあえず、靴を脱いでね。」
フフッと笑いながら頭を撫でられた。
真正面から抱き締められた腕の中は温かくて、心地よくて、そのまま溶けてしまいそうになる。